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小森昌章建築設計事務所さま

「自然の共生とはどういうことか」を基本に考えた施設です。

まず蓄熱式床暖房を導入したいきさつなどをお聞かせ下さい

今回設計した「さくら郷」ですが、クライアントから提案された最初のコンセプトが、既存の老人ホームとは全く違った側面を持っていたんですよ。普通は「介護が必要になったから」老人ホームの選択肢が出てくるものですが、この「さくら郷」はもともと「介護」の考えは基本コンセプトの中に含まれている「事柄の一つ」なんですね。つまり「介護も考えに入れた別荘」というのが発想の基本なんです。ですから最初の入居費用は多少高めで、当然そこから考えうる内装、ソフト面での充実・配慮は「居心地の良さ・住みやすさ」が基本になければいけない。

そうして考えた中で「床暖房」の存在はすでにコンセプトの段階から当然のようにあったんです。そうするとクライアント側としては気になるのは「初期費用及びランニングコスト」の面ですから、私も専門の業者に頼んで試算してもらったんですね。

ー すると蓄熱式が有利だった、という事ですね。

劇的でしたね(笑)。見積もった際にオーナーから言われたのが「本当に毎月これでやれるんですか」というセリフでしたから。やはり床暖房と言えば一般的なイメージが「コストが高い」という定着の仕方をしているのでしょうけど、九電さんの割安な夜間電力の契約と組み合わせれば、一般的な空調設備と比較してもランニングコストは極めて有利です。しかも自然な暖かさと涼しさが手に入ります

ー 涼しさも床暖房に関係してくるのですか?

ええ、むしろ鹿児島のような気候の土地では「涼しさを得るために床暖房を入れる」という考え方もあります。私の事務所でも床暖房を使っているのですが、夏場は涼しいですよ。床全体が熱を持つという考え方は、既存の空調の考え方である「気密・断熱」という「発想の制限」を外す事でもあるんです。

部屋を仕切る必要があまりなくなりますから、大きな空間や吹抜けといったプランを持って来れるんですね。そうすると風が通るわけです。自然の風ですから、その涼しさは人工の冷房より遥かに快適で、実際こことは別に住宅で床暖房を入れたクライアントさんは「夏場に二回しか冷房は入れなかった」そうです。

ー 自然な快適さが実現できる、 という事ですね。

そうですね。霧島という立地も十分に活かしたかったですからね。風光も明婿で桜島も高千穂も見える条件なんです。空港からのアクセスも近いし、子供さんお孫さんが宿泊できる別棟や露天風呂も完備されています。

最初のコンセプトにあった「別荘」というイメージを最大限引き出す強気のデザインを提案する前提として、床暖房はどうしても外せなかったソフトの一つでしたね。